■「岐阜和傘」~先達の技術を未来へ~
◆岐阜和傘の歴史
岐阜での和傘づくりは、寛永16(1639)年に播州明石藩主から加納藩主となった松平(戸田)光重が、傘職人たちを連れてきたことに始まり、宝暦6(1756)年に加納藩主となった永井直陳が下級武士の内職として奨励したことで、地場産業としての基礎を確立したといわれています。繊細で優美な岐阜和傘は、美濃の名産品として江戸や大坂、海外でも高い評価を得るようになり、昭和20年代中ごろに出荷最盛期となりました。
◆細く美しい岐阜和傘
現在、洋傘の普及に伴って和傘の生産は減少しましたが、和傘生産の国内シェア約6割を岐阜和傘が占め、国内で唯一轆轤(ろくろ)を量産するなど、岐阜が和傘産業をけん引しています。今年3月18日には、経済産業大臣の指定する国の伝統的工芸品となりました。岐阜和傘は、傘骨が細く、たたみ込みの技術が高いため、たたんだ時の姿が細く美しく収まります。
◆岐阜和傘ができるまで
多くの製作工程があり、ほとんどは手作業です。専門の職人が各工程を担当し、問屋が検品して販売する「分業制」が特徴です。工程の一部を紹介します。
★傘骨作り
傘一本に傘骨が数十本あります。マダケ、モウソウチクなどの竹が材料です。竹切ノコ(のこぎり)を使って、竹の節に沿った所定の長さで輪切りにします。さらに縦に細く小割にし、傘骨を作ります。順番に並べて、傘一本分の数を揃えます。
★轆轤(ろくろ)作り
轆轤は、傘骨と柄をつなぐ、傘の開閉に欠かせない部品です。材料のエゴノキから形を削り出し、くし目をいれ、傘骨とつなぐ糸を通す穴をあけます。
★張り
刷毛(はけ)で親骨にのりを塗り、軒(のき)から傘の中心にかけて平紙を張ります。余分な紙は剃刀で切り取ります。
★たたみ込み
傘をたたむ工程です。張った紙に親骨に沿った折り目をつけ、竹ヘラと締め輪を使って織り込みます。細身に仕上げることがポイントです。
◆和傘の構造(蛇(じゃ)の目(め)傘)
(構造図は本紙参照)
◆岐阜和傘を楽しむ
岐阜和傘は、歌舞伎や日本舞踊などの小道具として用いられています。また、持ち歩きがしやすい日傘は、ファッションアイテムとしても人気です。
岐阜和傘は加納地区や川原町で購入することができます。詳しくは、(一社)岐阜和傘協会【電話】271-0468へお問い合わせください。
■ヒト想い
(一社)岐阜和傘協会
平野明宏 代表理事
和傘の主要部分である傘骨やろくろを商用生産する職人は岐阜地域に数名しかおらず、限られた職人も高齢化が進んでいます。そのため、(一社)岐阜和傘協会では令和元年に職人見習いを募集し、見習い期間中の賃金や諸経費はクラウドファンディングで調達するなど、後継者育成に努めてきました。こうした取り組みを重ねてきた中で、岐阜和傘がついに念願の「伝統的工芸品」の指定を受けることができました。指定は長年の悲願でしたから嬉しさを感じる反面、責任の重さも感じています。これからも、後継者育成に加えて、技術継承、販路拡大、ブランド化への取り組みなど、活動の幅を大きく広げていきたいと思います。
問合せ:商工課
【電話】214-2359