“楽(らく)”で『やる気』に点火! 市長 細江茂光
いつの時代にも心に残る名言というものがあります。私も時々引用する孔子の『論語』は2千500年前に記(しる)されたにもかかわらず、現代社会にも十分通用する多くの名言を含みます。優れた哲学者の言葉や、苦労に苦労を重ねた上でようやく偉業を成し遂げた人の言葉というのは含蓄(がんちく)に富み、説得力があります。最近教育に関するある言葉が私の心を打ちました。アメリカの教育者、ウィリアム・アーサー・ウォードの言葉です。いわく“凡庸な(普通の)教師は、ただ喋(しゃべ)るだけ”“良い教師は、説明する”“優れた教師は、自らやって見せる”“偉大な教師は、学びの心に火をつける”というものです。
やる気のない子どもに対し、いくらあの手この手で教えてもなかなか身に付きません。ましてや“勉強しなさい!”などと怒鳴(どな)ったりすると、反発を招くばかりでかえって逆効果です。心が閉ざされていたのでは、何も中に入って行きません。この子どもの心を開かせ、やる気にさせるにはどうしたらいいでしょうか。人間は何事も深刻に考えすぎると、かえって委縮してしまうものです。ではこの深刻さを吹き飛ばす魔法のキーワードはないものでしょうか。それは年初に今年の一字としてご紹介した“楽”ではないでしょうか。“楽”とは広辞苑に、心身が安らかで楽しいこと。好むこと、愛すること。たやすいこと、やさしいこと。とあります。“楽”という状態は人間の持つ能力を最大限に発揮させてくれるのではないでしょうか。
『論語』にも“これを知る者はこれを好む者に如(し)かず(及ばない)、これを好む者はこれを楽しむ者に如かず”とあります。何事も“楽しいこと”が一番。教育も、仕事も、もっと言えば人生そのものも“楽しく”なければいけないということでしょう。“みんなの森 ぎふメディアコスモス”がもうすぐ開館2周年を迎えます。週末ともなれば、私が“岐阜の珍百景”と呼ぶ、開館前の長い行列ができます。1年目に続き、2年目の利用者も年間100万人を超す勢いで、市民の皆様に大いにご利用いただき、愛されています。この理由の一つはこの施設が従来の常識を破り、行って楽しい、滞在して楽しい空間を提供しているからではないでしょうか。幼児期からこの場所でお母さんらと一緒に楽しみながら知的刺激を得た子どもたちは、必ずやその学びの心に火をつけてくれるものと信じています。