『衣替え』の習慣は平安時代に中国から日本に伝わったそうです。当初は宮中行事として年に2回行われる貴族社会のみの習慣だったようですが、江戸時代になると着物の種類も増えたため、年に4回行われるようになったようです。明治時代以降は洋服が一般化してきたため、冬服と夏服の年2回に戻り現在に至っています。ただし、和服の世界では今も年4回の衣替えが行われています。四季が比較的はっきりしている日本では、『衣替え』が季節の移り変わりを感じさせてくれるある種の風物詩的な行事としてとらえられてきました。日本人は季節感にきわめて敏感で、浴衣、風鈴、蝉の声、蚊取り線香などに夏を感じるように、四季それぞれに着る物、食べる物、聞こえる音、見える色などで日本の風流を感じてきました。
ところで、日本には『粋(いき)』という言葉があります。例えば、春は桜、秋は紅葉など四季に応じた着物の柄(がら)がありますが、桜が咲く前に桜の柄の着物を着るなど季節を先取りするのが『粋』なんだそうです。私のように桜が咲いている最中に、ピンクのネクタイをしめているというのは『野暮(やぼ)』とか『無骨(ぶこつ)』と言われそうです。私も『粋』な『衣替え』を心がけたいものです。
さて、近年になって様相は一変し、衣替えを風流とばかり言っていられない時代になりました。いわゆる地球温暖化により世界の気温は毎年上がり続け、日本の年平均気温は過去100年間で約1.19℃上昇し、岐阜地方気象台によれば本市においても100年間の年平均気温の上昇は約1.69℃に上っています。このような環境変化に対応するため、平成17年度に一般公募した『クール・ビズ』(COOL BIZ)という名前のもと、環
境省はノーネクタイなど軽装による冷房抑制、電力節減などを呼びかけはじめ、本市でも平成18年度から職員のクール・ビズをスタートさせました。当初は6月1日から9月30日までの4か月間が想定されていましたが、平成23 年の東日本大震災を受け、更なる節電をめざし、平成25年度より5月1日から10月31日までの6か月間とされ現在に至っています。
本市では平成16年度から「地球におもいやり エコオフィス運動」を推進し、オフィス内の温度を夏は過度に低く、冬は過度に高くしないよう努力しています。皆さんと一緒に、日本人の得意技(とくいわざ)『衣替え』で暑い夏、寒い冬を乗り切るなど、環境にやさしい生活を心がけたいものです。