市議会では、市政の発展に向けた施策などを行政に提案したり、市政に対する提言などを行うため、先進的な事例や取り組みを行っている都市に出向いて直接調査・研究する 「行政視察」 を委員会ごとに実施しています。今年度は10月・11月に総務、経済環境、厚生、建設、文教の5つの常任委員会が行政視察を実施しましたので、その概要をお知らせします。
■総務委員会
(1)兵庫県姫路市 (10月10日) =トランジットモールの導入について
道路の通行を歩行者および公共交通機関に制限する 「トランジットモール」 の取り組みを視察しました。姫路市では、駅前の約340mの区間でバスおよびタクシーを除く一般車両の進入を常時禁止しており、歩行者空間の拡大、にぎわいの創出、また、バスの定時運行の確保など公共交通の利便性向上を図ることで、中心市街地全体の魅力を高めています。本市のトランジットモールとは形態が異なるものの、姫路市のトランジットモール導入に当たっては、検討段階から地元商業者、交通事業者、専門家などが積極的にかかわっており、実効性のある取り組みとする上で、このような多方面にわたる連携が不可欠であると感じました。
(2)大分県大分市 (10月11日) =大分都市広域圏について
本市が連携中枢都市として3市3町との連携中枢都市圏の形成を進める中、大分市が6市1町と形成する「大分都市広域圏」 の取り組みを視察しました。大分都市広域圏推進会議の幹事会および各専門部会の構成や検討状況をはじめ、観光パンフレットや大都市圏での物産展を活用した大分都市広域圏観光PR事業などの事例は大変参考になるものでした。一方で、市役所の部局間や各市町との認識の相違、事業費の分担等の課題を抱えており、本市も効果的な連携を図っていくためには、各市町と綿密な協議を行うとともに、圏域の特徴を十分研究した上で事業を実施することが重要であると感じました。
■経済環境委員会
(1)福岡県久留米市 (10月31日) =宮ノ陣クリーンセンターについて
久留米市では、焼却施設、リサイクル施設および環境交流プラザから構成される宮ノ陣クリーンセンターが平成28年度から稼働しています。宮ノ陣クリーンセンターは、災害時に対応できるよう建屋は法令を上回る耐震性と出入り口には防水扉を備え、敷地内の広場には、地震や台風などで発生したごみを一時的に保管する災害廃棄物置場が設置されていました。本市においても、平成34年度稼働予定の新リサイクルセンター建設に当たり、今後発生が懸念される南海トラフ巨大地震への対応など、災害を十分考慮した整備を行っていく必要があると感じました。
(2)佐賀県唐津市 (11月1日) =企業誘致の取り組みについて
唐津市では、地の利や地震の発生件数の少なさなどの特色を活かして企業誘致を進めています。その中では新たに誘致しようとする企業だけではなく、既に誘致した企業についても年に数回訪問し、要望を聞くなど、きめ細やかなサポートがなされていると感じました。また、2013年からは既存の誘致施策に加え、アジアに向けた化粧品産業の集積地を目指す 「唐津コスメティック構想」 を掲げ、産学官で構成するジャパン・コスメティックセンターを立ち上げ、フランスの化粧品産業との連携により事業を進めています。ものづくり産業等の誘致に取り組んでいる本市においても、唐津市の取り組みは大いに参考となりました。
■厚生委員会
(1)石川県金沢市 (11月6日) =児童相談所について
金沢市では、中核市において任意に設置できる児童相談所を設置し、養護、保健、障がいの各種相談とともに、要保護児童の一時保護を行っていました。子どもを取り巻く環境は日々変化しており、児童相談所を設置していないものの、子ども・若者総合支援センターを設置し、子ども・若者の悩み・困難の解消を総合的に支援している本市においても、児童福祉の充実を図るきめ細かな支援は大いに参考になるものでした。
(2)東京都町田市 (11月7日) =認知症対策について
町田市では、認知症発症の遅延化を目的とする 「地域型認知症予防プログラム」 を実施していました。特徴は、認知症になりにくい習慣を身につけるため、参加者がプログラムの目的を認識できるよう事前説明会を行っている点とプログラムを終了した参加者がグループをつくり自立して活動している点でした。また、各活動グループの有志により町田認知症予防活動交流会を発足させ、交流イベントの企画・実施などを行っていました。認知症の発症予防に係るさまざまな施策を実施している本市においても、市民との協働による認知症予防の取り組みは大いに参考になるものでした。
(3)神奈川県横浜市 (11月8日) =横浜市子どもの貧困対策に関する計画について
横浜市では、将来を担う子どもの成長を守り、貧困の連鎖を防ぐことを目的に 「子どもの貧困対策に関する計画」 を策定し、実効性の高い施策の展開と支援が確実に届く仕組みづくりを進めていました。日本の子どもの貧困状況は先進国34か国中25位と厳しい状況であり、計画の策定に当たり、市民アンケート等の実態調査により、一定基準を下回る所得の世帯で生活する子どもの情報を把握することや貧困の連鎖を防ぐための当該計画に基づく各種施策は大いに参考になるものでした。